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長引くコロナ禍と入居者への影響
新型コロナの影響が長引き、家賃支払が困難となっている人が増加しているようです。
NHKの調べで全国の自治体にアンケート調査したところ、失業などによって家賃が礼払えなくなった人に、自治体が一定額を上限に家賃を支給する制度「住居確保給付金」の申請件数が今年4月から7月までの4か月間で5万件近くとなり、前年の同じ時期のおよそ90倍に上っていることが分かりました。
「家賃払えない」 給付金申請が前年の90倍に
滞納の常習者以外からの滞納が増えてきたという声も多く、特に、敷金や礼金などの初期費用が低い物件ほど滞納者が発生する傾向が強いようです。この傾向は今後も続いていくと予想され、多くの賃貸不動産オーナーへ新型コロナウイルスの影響が重くのしかかってくる可能性が高くなってきました。
滞納家賃に対し早期に行うべき税務対策→「貸倒損失」
滞納家賃についてオーナーの税務上の注意点は、税務上の取り扱いです。滞納家賃は実際の入金がありませんが、その年の不動産所得に算入されて所得税・住民税の対象となります。
特例として、現金主義会計を適用している場合には実際に入金された家賃だけ計上し、滞納分は計上しなくてよいものとされています。
しかし、現実問題として現金主義会計を採用している小規模のオーナー様は少ないので滞
納家賃も売上となってしまいます。
現金主義(げんきんしゅぎ、英: Cash basis)とは会計概念の一つで、収益と費用を現金の受け渡しの時点で認識する会計原則を指す。現金の受け渡し時期にかかわらず取引の確定時点で収益と費用を認識する発生主義とは反対の概念である。これらを用いた会計手法は通常、それぞれ「現金主義会計」や「発生主義会計」と呼ばれる。現金主義は実現主義とも呼ばれる。
現金主義では収益と費用が現金と連動しているために差異の発生余地が少なく、管理に対する手間が少なくなると期待できるが、信用取引を扱えず資産への減価償却などが行えないなど財務会計としては多くの問題があるために、特殊な場合を除けば企業会計での使用は許容されていない。 (参考:Wikipedia)
オーナーの税務的な希望としては、事実上回収不能となった滞納家賃は早期に貸倒損失として落として税金を安くしたいのが心情です。しかし、きっちりと手続きを踏まないと税務署はそれを認めてくれません。
具体的には滞納状況が左記の3つのいずれかに当てはまれば貸倒損失と認められます。
①法律上の貸倒損失
会社更生、民事再生、破産、滞納家賃の債務免除を書面で通知されたなど、法律上の貸倒れがあった時。
②事実上の貸倒損失
借主の資産状況や支払能力などから見て、回収できないことが明らかになった時。(借主の個人資産の把握が必要)
③形式上の貸倒損失
借主が部屋を出て行った後、1年以上経過している場合で、滞納家賃の回収にかかる費用がそれを上回る時。
滞納者のほとんどは、そのまま居座るか行方不明などのケースが多いです。したがって行方不明の場合は、その事実が発生してから1年以上経過した後、形式上の貸倒れで処理することができます。
居場所は分かるけれど、回収出来る見込みがない場合は、借主に対して内容証明で債権放棄を通知して、法律上の貸倒れで処理するということが有効です。
滞納者への回収手続きの経緯や結果、債権放棄に至った内容証明郵便などは、税務調査時に必ず必要になりますのでしっかりと保管しておく必要があります。
ただし、個人の事業的規模ではないオーナーに限っては、その年の貸倒損失とはできず、家賃収入計上の年度まで遡って更正の請求という手続きが必要となりますので注意が必要です。
家賃保証で賃貸経営リスクを減らしましょう
そもそも、滞納が多く発生する経済状況下で「家賃保証会社」を事前に利用していて良かったというは話はよくあります。滞納トラブル回避や収入の担保をするといった対応を行う家賃保証会社が、今回のコロナ禍のようなトラブルにも役立つことが伺えます。
賃貸経営にはどうしてもリスクがついて回るので、事前にそうしたリスクに対して準備をすることで、立ち直りも早くなるかと思います。
