不動産

【不動産オーナー向け】家賃滞納が発生した時の対応方法と防止策

不動産投資をやっていると様々なトラブルに見舞われます。

  • 空室が埋まらない
  • 入居者が大声を出して近隣に迷惑をかける
  • ゴミ出しのルールをいくら注意しても守らない等々..

物件を買うたびにそういったトラブルはつきものですが、こういったトラブルを一つ一つ解決していくことで徐々に優良な資産になっていきます。

ただ、そんな数あるトラブルの中でも一番厄介なのは家賃の滞納かと思います。

投資用不動産の規模を拡大していけば、いずれは誰もが一度は入居者が家賃を払ってくれない・・そんな状況に遭遇するのではないでしょうか。

最近は家賃滞納の保証会社に加入することを条件として入居させることが多くなってきたので、以前ほど滞納トラブルになるケースは多くありませんが、古アパートを買った場合などは昔からの入居者を契約条件そのまま引き継ぐため、そもそも滞納保証を利用していないケースや既に家賃滞納が常習化している場合もあります。

満室で利回りが高い物件を買ったのに、家賃が入って来なかったら最悪です。そこで今回はこのやっかいな滞納された家賃をどのように解消すればいいのか、その回収の方法や滞納常習者への対応方法についてまとめてみました。

目次

家賃の滞納を見逃してはいけない理由

滞納家賃は売り上げになってしまう

家賃滞納を見逃してはいけない理由の一つは、滞納している家賃も売り上げになってしまうからです。

家賃が滞納していても入居者がいる状態であれば、「未収入金」として課税対象になってしまいます。滞納家賃を数万円も放置していたために、税務調査が入ってしまった際、これを売上に計上され、ごっそり税金を取られてしまったケースなどもあります。

滞納家賃は回収を諦めた時に損失計上しないと、そのまま未収金の売上として税務署に課税されてしまいます

こういった理由からも滞納家賃は絶対に放置してはいけません。

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初動対応が遅いと滞納が常習化する

家賃滞納を見逃してはいけない理由の2つ目は、初期対応が遅いと滞納が常習化してしまうからということです。

管理会社は、家賃が払われなくても入居者にすぐに連絡を取ることはありません。一般的な滞納督促では、だいたい1ヶ月ぐらい支払いが遅れてから連絡をすることが多いですが、その連絡方法はメールや手紙を送るだけといったケースが多いと思います。

管理会社がわざわざアパートを訪問して家賃を回収するということはほとんどありません。入居者が経済的に苦しくて支払えない場合は、1カ月も遅れて督促をしても返事が来る確率はかなり低いうえに、仮に連絡が取れたとしてもそもそも経済的に苦しくて滞納しているのであれば、一度で全額を回収するのは非常に困難です。

さらに管理会社にとって滞納督促は嫌な仕事のトップ3に入るぐらい面倒な仕事なので、その対応が後回しにされてしまうことが少なくありません。実はこういった管理会社の初期対応の遅さが滞納トラブルを複雑にしてしまっているんです。

お金を払わない人はお客ではない。

家賃の滞納を見逃してはいけない3つ目の理由としては、お金を払わない人はお客では
ないということです。

大家さんは、お部屋という価値を提供してお家賃をいただいているので、基本的な考えとしては家賃を支払わない人は、お客様ではありません。

例えば飲食店で1,000円の食事を食い逃げすると犯罪になるのに、家賃を支払わない人がそのまま住み続けていい訳がありません。なぜなら家賃を払わないのも食事の食い逃げと一緒で犯罪だからです。

家賃の滞納を放置しているとますます借金が重なって支払いはどんどん難しくなっていきます。なので早急に対応して自治体のセーフティネットの活用を促したり、大家として家賃の督促をしっかりすることは入居者を犯罪者にしないための大家の務めであると思います。

家賃を滞納する理由・・

なぜ入居者は家賃を滞納してしまうのか。その理由は、

  • うっかり忘れ
  • 本当に経済的に支払えない

基本的には上記2つのどちらかになっています。

うっかり支払い忘れたのならすぐに払ってもらいますが、経済的に払えなくなってしまった場合には、早急に対応しないと滞納家賃の回収はおろか、その先もずっと家賃を払わずに居座られてしまう可能性があります。

現在の借地借家法では、入居者は家賃を滞納してしまっても家賃を支払う意思があれば契約を解除して追い出すことはできないことになっています。

家賃の不払いを理由に追い出すのであれば裁判で決着をつけなければならず、それでも居座る場合には強制執行の申立をして裁判所に強制執行を認めてもらった上で執行官の立ち会いの下で追い出しをしなければいけません。

裁判をして判決を取るためには半年かかることもありますし、当然裁判の費用もかかってしまいます。また裁判の期間中は家賃が一切入ってこないので、その損失分の家賃は1年以上になることもあります。

このように家賃の滞納を放置してしまうと非常に大きな損失になってしまうので絶対に放置はしてはいけません。では家賃の滞納を一体どうやって解消すれば良いのでしょうか。

家賃滞納の解消方法

1日でも支払いが遅れたら連絡する。

まず家賃が1日でも遅れたら、すぐに入居者に連絡を入れるようにします。連絡はメールでも良いですが、携帯に連絡するのが一番良いと思います。

最初はうっかり忘れのことも多いので「お忘れではないですか」など、やんわりとした確認の連絡をします。2、3日で連絡が取れる場合にはうっかり忘れのケースが多く、すぐに払ってもらえることが多いです。

しかし2週間経っても連絡が取れない場合は、うっかり忘れではない可能性が非常に高くなります。この段階ではもう滞納と判断して電話に加えてアパートにも訪問します。

入居者が留守の場合には督促の手紙をプライバシー保護のために二つ折りにしてドアに
貼り付けます。

職場・連帯保証人に連絡する。

さらに1,2週間経っても連絡が取れない場合には職場への連絡と合わせて連帯保証人にも連絡をします。職場に電話をして連絡が取れる場合には、すぐに家賃を払ってもらえるケースが多いです。

職場への連絡と合わせて連帯保証人にも連絡を取る理由は、家賃を代わりに払ってもらうことではありません。入居者がほぼ確信犯的に家賃を滞納しているのであれば、連帯保証人に家賃を代わりに払ってもらったとしても、根本的な解決になりません。

連帯保証人に連絡をしてお願いする事柄は、「入居者に連絡が取れなくて困っています。そちらから入居者に連絡を取ってもらえないでしょうか?」というような、代わりに連絡をとってもらうためのお願いです。

こうすれば管理会社の電話には出なくても、(連帯保証人である)親の連絡には出ると思います。こうして親から軽く叱ってもらうことで滞納癖を直すようにしていくのです。

実際に訪問する。

職場や連帯保証人に連絡をとっても入金がない場合には今度は実際に訪問をします。もしアパートを訪問して入居者に会えた場合には、滞納している家賃をまずは5千円でも1万円でも良いのでその場で回収して、支払う癖をつけさせることがポイントになります。

またすぐに支払えない場合には滞納家賃を数か月の分割払いにすることもありますが、「もし払えなかった場合には契約を解除して退去する」という旨の同意書をつくり、そこにサインしてもらうようにします。

何故このような厳しい対応をするのかというと、家賃支払いの優先順位を上げさせることが重要だからです。

家賃は滞納しているにも関わらず、カードローンを支払ったり、車のローンを支払ったり、衣服や食事にはお金を使っているわけです。最後になって家賃を払うわけですが、その家賃を支払うためのお金が残っていないから滞納してしまうのです。そして、なぜ家賃支払いが遅れてしまうのかというと家賃の督促が一番緩いからだと思われます。

もし入居者が本当に経済的に苦しくて払えないのであれば、自治体のセーフティーネットを紹介したり、すぐに自治体の窓口に行って住居確保支援金の申し込みや生活保護を申請してもらいます。

「経済的に大変だから」と、家賃の支払いを待ってあげたりする人情派の大家さんも一部いらっしゃるようですが、そういった大家さんの親切心に漬け込んで確信犯的に家賃の滞納を常習化する人がいるのも事実です。

そもそも大家さんが家賃を待ってあげなくても自治体にはセーフティーネット制度があるので、大家さんが家賃を待ってあげる必要はまったくありません。

何度訪問しても入居者と連絡が取れない場合

例えば、部屋の電気メーターが回っているにもかかわらず反応がない場合には居留守の可能性があります。その時には近くの交番に行き、「入居者に連絡が取れないのですが、もしかしたら孤独死しているかもしれませんので一緒に立っちゃってもらえませんか」と言ってお巡りさんと一緒に室内に入るようにします。

おまわりさんと一緒に室内に入る理由は、本当に孤独死している場合もあるのと、あとで「勝手に中に入った」とトラブルにならないようにするためです。

滞納常習者を追い出す方法

次に、滞納常習者を追い出す方法についてです。

電話をしても訪問しても連絡が取れず家賃回収の見込みが立たない時は、確信犯と判断してすべての督促をストップします。というのも家賃の滞納が3カ月以上ないと裁判所が訴状を受け取ってくれないからです。

なぜこのような慣習になっているのかというと、おそらく3ヶ月分ほどの家賃を滞納しないと、大家さんと信頼が失われたとはいえず賃貸借契約は解除できないと判断しているのではないかと思われます。

そして家賃が3ヶ月分たまった段階で立ち退き訴訟を行います。これにも弁護士の費用が30万円前後かかってしまい、痛い出費ですが致し方ないです。

裁判をすると遅くとも2、3か月で判決が出ると思いますが、その裁判では入居者に「○○日までに退去しなさい」という命令が出ます。そして退去しない場合には裁判所に強制執行の申立をします。

すると裁判所から執行日日程の連絡が来るので、当日は執行官の立ち会いの下で立ち退き
が行われます。ただし残置物の撤去の費用はこちらで負担しなければなりませんから、さらに執行費用が10万円以上かかってしまうことが多いです。

ちなみに滞納している家賃の裁判は別で行うことになりますが、判決しても返済さ
れる見込みはほぼゼロなので、結局泣き寝入りしてしまうことが多く、立ち退き訴訟だけするケースが多いと思われます。このように裁判まで行ってしまうと、大家さんも滞納家賃以外にさらに費用がかさんでしまいます。

裁判は費用が掛かるので、これも検討しましょう

なので・・・裁判をする前に入居者に会えるようであれば管理会社から内緒で「あること」を囁いてもらうこともあるんです。

そのある事とは何か・・それはズバリ「夜逃げ」を囁いてもらうのです。

当然夜逃げをされると家賃の回収はできませんが、費用をかけて裁判で決着する必要がなくなります。もちろん夜逃げをしてもらっても中の残置物を勝手に撤去することは民放の「自力救済禁止の原則」といって違法になってしまいます。

しかし仮に入社から訴えられたとしても、まあ相手方も家賃を相当滞納しているので、裁判では痛み分けになるか、大家側の方が損害賠償金額が多く請求できるかと思われます。このように場合によっては夜逃げをしてもらった方がお互い良い場合があるのです。

しかし繰り返しますが、これは自力救済の禁止といって民法では違法になってしまいますので、もし実施する場合にはご自身の責任においてするようにしてください。

トラブルを未然に防止する賃貸借契約書のまき直し

最後にトラブルを起こさない賃貸借契約をまき直す方法についてです。

家賃の滞納トラブルを長期化させないために大切なことは何かというと、その賃貸借契約を定期借家で行うことです。定期借家契約であれば契約期間の満了と共にこのような不良入居者を確実に退去させることができます。

また新規の入居者は必ず家賃滞納保証に加入することを条件にします。家賃の回収も保証会社が行うので面倒がありません。また、万が一の訴訟費用や立ち退き費用なども全てカバーされます。

「連帯保証人をつけているから良いじゃないか」という意見もありますが、昨今の連帯保証人はそもそも返済能力の無い人が多い上に、連帯保証人に家賃を代わりに払ってもらっもたったところで、根本の解決にはならないので、いつかは結局滞納が再発してしまいます。

よって、新規の入居者には必ず家賃保証会社に加入することを条件にしてください。また中古物件を新しく取得した時に必ずすべきことは契約のまき直しです。この契約のまき直しも必ず定期借家契約で行うようにしましょう。

一般的に、既存の入居者との賃貸借契約は前オーナーとの契約条件を引き継ぎますが、長く住んでいる人の場合には更新がされておらず、契約期間が切れたままになっているケースがよくあります。

こういった更新がしっかりされていない契約は、法定更新された契約となり、契約期間の
定めがない契約となってしまいます。

そこでこういった契約期間の定めのない契約になっている場合には、一旦従前の契約を
合意解約して、新たに定期借家契約で巻きなおした方が良いでしょう。

入居者に「どうして定期借家契約にするんだ」と聞かれた場合には、「定期借家契約なら、不良入居者とのトラブルを早期に解決して皆さんの住環境を守るために必要なのです。ご理解いただけないでしょうか」

このように言えばほとんどの方が納得してくれると思います。

一部、このような定期借家契約に対して反論される方がいます。

「定期借家契約だと契約が終わったら必ず立ち退かなければいけない。だから家賃を安くしなければいけないし、敷金も礼金も取れない。だから定期借家契約はダメだ」

いまだにこういういった反論をされる方がいますが、これらは思い込みであって事実ではありません。

実際、弊社で管理している物件の約半数は定期借家契約を結んでいますが、定期借家契約だからといって家賃を下げているものもありません。

もちろん定期借家契約だと契約の更新はできませんが、再契約型の定期借家契約にすれば特段の問題ありません。「初回の契約時に問題が無ければ再契約します」と言っておけば問題無く、実際にほとんど全てのケースで再契約を行っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。お金を払わない人は客ではありません。家賃を払わないのは食い逃げと同じ犯罪です。回収が後手に回ると家賃の全額回収は難しくなりますので、家賃が遅れたらすぐに対応するようにしましょう。

滞納の督促は絶対に手を緩めてはいけません。もちろん本当に経済的に苦しくなっている入居者がいれば、自治体のセーフティーネットの利用を進めて、場合によっては一緒に窓口に行ってあげるなどして、根本的な問題を解消できるよう取り組みましょう。

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matsud0
1988年11月生まれ。保険会社システムエンジニア→収益不動産会社の営業。奥渋谷、六本木をメインに活動中。収益不動産情報をメルマガで配信中しています。