MATSUD0です。
世間では10連休明け、令和になってから最初の平日がスタートしました。そんな中、不動産情報サイト「レインズ」で1円の売買物件情報が出てきました。
これですね pic.twitter.com/hv1LleZWIi
— かたくられん🏠 (@wakuwakucamera) 2019年5月7日
熱海の1円その他が邪悪すぎる。 pic.twitter.com/iWWOA3F0yN
— リチャードホール (@okirerebc) 2019年5月7日
一般的には数百万円、数千万円、あるいは数億円などという大きな金額が必要となる不動産取得ですが、1円は破格すぎますね。
ただ、物件情報の「その他」の項目に様々な内容が盛りだくさんです。
昔から「タダより高いものは無い」と言われているように、安いからにはきっと何か裏があるはず。今回はこの物件を例に挙げて1円物件の裏に潜む「安いワケ」を探っていきたいと思います。
「安い不動産が欲しい」「ボロ家を買って不動産投資を始めたい」そういう方にも参考になれば幸いです。

目次
「その他」項目を軽く解説
土地面積に傾斜地部分を含む
図面上の土地面積は約161.3㎡ですが、傾斜地部分も面積にカウントされています。写真の通り、手前側には擁壁があり、また、奥にも勾配のある擁壁があります。
一般的な話になりますが、建物を建築する際にはがけ条例というものがあり、擁壁の高さから2mの距離を取らないと建築出来ないといった制約があるのです。

上記のように擁壁との間に距離を取ることを考えると、実質的に再建築は難しい気がします。再建築が出来ない物件は融資が下りない、あるいは融資条件が厳しいのですが、、この物件は1円なのでその辺はクリアしているようです。笑
擁壁が老朽化している
外観写真を見ての通り、この物件は擁壁を乗り越える勢いで建っています。
外観写真
その擁壁部分が老朽化し、なおかつヒビ割れています。この先修繕をしなければ地震や大雨などの災害時に壁もろとも家が崩壊する可能性があります。ここは手を加える必要がありそうです。
建物リフォーム要(雨漏り・腐食等有り)
雨漏り・腐食など建物の内部からダメージを受けています。写真を見ると天井部の雨漏りが長期間続いており、天井から滴った雨水が畳まで侵食している様子です。
室内写真
天井からの雨漏りを放置しているところを見ると、長期間空室なのでしょう。腐食がひどければ該当箇所を丸々取り換える必要が出てくるので、かなりの修繕費用が掛かることが予想されます。。
前面道路の私道持分無し(通行承諾書等未取得)
前面道路は私道ですが、持ち分はない様です。通行承諾書もないですし、当然に掘削承諾も無いものと思われます。現オーナーがどのような状況で保有しているのか分かりませんが、仮に購入後に暮らす際、第三者の保有する道路を通行するわけなので、何かあるかもしれません笑。未取得なのは、取得したようと試みたけれどダメだったのか、そもそも取得しようとしていないのか、この辺りも気になるところです。前者だと結構厄介な気がします。
以前神奈川県川崎市のアパートを扱った際、同じく通行掘削承諾を取得出来ない私道が目の前にある案件がありました。その時は私道の所有者がかなり高齢の方で、「書面等はかわしたくないが自由に使って構わない」という事を仰っていたので、そこまで面倒な展開にはなりませんでしたが、結局融資が難しくてローンブレイク。前面道路がしっかりしたものでないと、金融機関からの評価は押し下げられます。
境界建物の新築・増改築、建築確認の必要な修繕は不可
築古ボロ物件の定番です。再建築などは原則できません。既存の建物を修繕するなどして立て直して利用していくことになるかと思われます。そもそもこの建物が建つ土台が危なそうなので、いずれにせよ、まずここを補強する必要がありそうです。
階段部分は第三者所有(通行・掘削承諾未取得)
これはよくわからない状況ですが、建物の階段部分を第三者が所有している様です。前面私道の件含め、どういった背景でこうなっているのかを調査した方が良いかもしれません。
給排水管の漏水可能性あり
これも恐らく漏水しているのだと思われます。埋設された配管の交換はそれなりの金額がかかってくると思われます。
増築未登記部分有り
もともと再建築不可ですが、未登記の増築部分を加えると建ぺい率・容積率の超過要因になるかと思います。
また、増築未登記部分について、役所が把握していなかった場合、後日、固定資産税の追徴があるかもしれません。本来払わなければならなかった増築部分について、遡っての請求の可能性もあります。
さらに、可能性は少ないですが、増築部分の所有権がきちんと売主にあるのかも確認する必要があります。増築部分について、真の所有者であると主張してくる人物が登場しないとも限りません。
まとめ
取得後にかかってくる建物・擁壁の修繕や隣地との権利関係の整理にかかる労力や費用などを考えると、この物件は割高だと思います。安かろう悪かろうと言いますか、只より高い物はないと言いますか。。おそらく諸々の問題をクリアして、通常の賃貸アパートとして復活させるには2,000~3,000万円程度は必要になってくるかと思われます。
高台にあるので眺望は良さそうです。都会の喧騒を離れた別荘地としてなど、収益を度外視した用途であればアリかもしれません。しばらくは検討期間を与えてくれそうな物件です。