読書感想

「WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE.」を読んで

WE ARE LONELY, BUT NOT ALONE. 〜現代の孤独と持続可能な経済圏としてのコミュニティ〜 (NewsPicks Book)という本を読みました。

この本を読むきっかけはTwitter の影響です。幻冬舎編集者「箕輪厚介」さんの紹介する本はどれもとても読みやすくてとても面白いです。正直、読む前までどんな本なのかさっぱりでしたが、読みやすくてサクサク読めました。

この本の大筋の内容は、「なぜ今、人は孤独を感じているのか」、「どうすれば孤独を感じないためのコミュニティを育てられるのか」というものです。

目次

はじめに・・

こちらの本は、現代における「コミュニティ形成の方法」が論理的に書いてあります。

ただ、著者の方も書いていますが、完璧に検証されたものではなく、あくまで現状での結果と仮説を書いています。また「現代における」という表現は、インターネットによりコミュニティのあり方が変わってきているという意味を持ちます。

ネットによって生き方の幅が広がった。自由になって幸せになると思っていたら、幸せになれない。そもそも僕らは自分がどれくらい自由なのか、不自由なのかを、自分ではなかなか理解できない。社会の要請としてある習慣を、自分たちで「やるべき」こととして、同調圧力をかけて、周りも実践するように仕向けていく。不自由の中に入り込んで、自ら納得してしまっている。

この本を読んで面白いかったのは、個人的に「大事だ」と思うポイントが突然ポッと出てくる点です。また、論理的に書かれているので「なるほど」と納得して、わかりやすく言語化されているのでイメージがしやすいと思いました。

これからは、物質の所有やヒエラルキー付き組織への所属ではなく、自分は何を欲しいのか、何をいいと思うのか、それをわかりやすく表明している個人への注目が集まっていく。SNSでフォロワーを多く集めているのは、どんな価値観で生きているかわかりやすく、ブレない人だ。

情報の爆発

2002年のインターネット上の情報量を「10」とすると、2020年のインターネット上の情報は「60,000」。実に6,000倍です。

どの情報が信頼できるか、など取捨選択するだけで疲れてしまうので、信頼できる人やコミュニティが影響力を持つようになっています。

だんだん世の中に出回る情報が増えてくると、わかりやすいだけでは作品が読者に届かなくなっていった。この壁を乗り越える方法を考えていたところ、情報爆発の時代だからこそ、身近な人が「これは良い」とコメントしている本が、手に取られることに気づいたのです。身の回りの推薦だけが影響を及ぼすというのは、一周して、本がほとんどない時期と同じになったということ(笑)。 

著者は情報の爆発への対策として、情報の一つ一つに意思決定するのではなく、どのコミュニティに入るのかを意思決定することで、情報爆発に対応できるのではないかと述べています。

社会がなめらかになる事による漠然とした不安

アナログな世界から急速にインターネットは発展し、世の中は膨大な情報にあふれ、人とのコミュニケーションが圧倒的に取り易くなりました。

その結果、人々は幸せになったのか?という質問に佐渡島さんは疑問を感じています。自由過ぎて逆に不安なのではないかと言うのです。型にはまり役割を与えられることで、自分の居場所を感じ、心のよりどころとしてきた。それが無くなりつつある今は、誰もが不安を抱えているのです。

今までの社会は不自由で、僕らは無理やり合わせていた。インターネットは、人々に自由をもたらし、社会をなめらかにする。しかし、過渡期であるが故に混乱も起きていて、多くの人が幸せを感じられていない。奴隷の幸福という言葉があるように、僕たちは型にはまり、役割を半ば強制的にあたえられるほうが楽で、居心地がいい。型にハマることを教えられてきた僕たちは、その型から解き放たれ、心のよりどころがなくなり、不安を感じている。 

「熱狂」だけではいけない。

コミュニティを作る上で「熱狂」は必要か。答えはYESです。しかし、「熱狂」だけではいけないのです。なぜなら、必ず熱狂には温度差が生じてしまうからです。

ベンチャーなど熱狂に伝染した人たちは、やはりその熱狂の根元の人ほどの熱狂はどうしても持てません。そしてその「同程度の熱狂を持てていない」ということに無力感を覚えてしまうということです。

これは何かを取り仕切ったことがある人なら似たようなものを感じたことがあるかもしれません。すごくやる気を持ってチームを組んでやっていたら、いつの間にかそのやる気にギャップが生まれ、その集団がうまく機能しなくなる・・というのも、この「『熱狂』だけではいけない」ということに近いのではないでしょうか。

さらに真の熱狂についての考察も、とても参考になります。熱狂とは「テンションが高い状態」「モチベーションが高い状態」。この2つがあります。

そして大事なのは「モチベーションが高い状態」。モチベーションの高さとは、上下することがなく困難に直面しても頑張れると言います。この「熱狂」はテンションが高いのとは違うため周りからはわからないかもしれません。その「静かな熱狂」がコミュニティには必要だということです。

まず「安心」と「安全」が必要である

「熱狂だけではいけない」と考えた佐渡島さんのたどり着いた仮説は「挑戦」とは安全と安心の上で起こるのではないかということです。

安全とは場所やモノ、安心とは心理状況に紐づくものです。さらに、本書にある安全と安心の定義を要約すると、安全とは身の回りに危険がない、あっても準備ができていること。
安心とは予測に大きく反する状況にならないと信じるということ。
自分の想定の範囲内かどうかがポイントなのです。

熱狂を生み出すよりも安心・安全の確保が重要だと説明してきた。しかし、熱狂が全くない場合も、そのコミュニティは人を惹きつけることができず、自然に崩壊してしまう。だから、熱狂は絶対に必要ではある。重要なのは、熱狂の順番だ。

熱狂→拡大→熱狂を繰り返すと、どこかで破綻する。そうではなく、安全・安心の確保→熱狂→拡大→安心・安全の確保を繰り替えるのが重要だ。

コミュニティにおいては、安心・安全があって初めて熱狂が機能するのです。安心・安全を常に担保していかないといけないのです。安心安全がなく熱狂だけで進んでいくと
必ずどこかでうまくいかなくなるというのです。

コミュニティが目指すべきは「信頼」

コミュニティというと宗教のように「信仰」をイメージしてしまうかもしれませんが、佐渡島さんの目指すコミュニティは「信頼」を目指している。

さらに、「信用」と「信頼」には言葉の定義として違いあると言っています。

「信用」は、過去の実績や成果物を、価値があると評価することだ。過去のことだから虚偽ではない限り崩れないし、片方が一方的に評価するので、関係にならない。

一方、「信頼」は、未来のことを指す。過去の実績を「信用」して、不確実性のある未来のことも信じて、評価する状態が、信頼だ。片方が一方的に信頼することはできない。信頼は常に双方向だ。だから、「信頼関係」になる。 

この分析は「なるほど」と思いました。

コミュニティの「信頼」というものを考えた時に、「中と外」という概念にたどり着き、コミュニティがまるで免疫学についての話のように聞こえてくる、という話もとても印象に残りました。

「唾は口の中にある時は、汚いと思わないからいくらでも飲み込める。でも、一度口の外に出ると、飲み込むことが急に汚く感じる。コップに出した唾をもうち一度飲み込むことはなかなか出来ない」。人のこの生理的な反応は非常に不思議だ。「唾」を、「人」に置き換えてもおそらく成立する。同コミュニティ内での振る舞いであれば許容できたものが、外のコミュニティになった途端、許せなくなったりする。

確かに、唾って一度口から出してしまうと、もう一度口に含むのってかなり抵抗がある気がします。「信頼」の中に成り立つコミュニティ内を抜け出してしまったとき、同じ物事も許容できなくなる。

コミュニティには「信頼」が必要なのです。信頼があるからこそコミュニティに所属する価値があるのです。どんな組織であっても信頼があるからこそ、困難なプロジェクトや課題に取り組めるのだと思います。「信頼」を意識することは大事だと感じました。

まとめ

インターネットが普及してそれがあることが当たり前となった今の時代で、どう人と繋がっていくかを説いた面白い本でした。

本書では、第1章と第2章で「現代になぜコミュニティが必要か」についての考察があり、
その上での第3章「コミュニティとはどうあるべきか」でした。

しかしここで挙げたポイントは、どのような組織にも通用することではないでしょうか。

全体を読んだ感想としては、この本の「コミュニティ」に対する解説はとても勉強になりました。佐渡島さんの人柄がわかる漫画も面白かったです。

「We are lonely, but not alone.」この言葉、実は少し不思議だ。

「我々は孤独だが、一人ではない」。

「We are alone, but not lonely.」

「我々は一人だが、孤独ではない」の方が、よくある概念だと思う。

孤独であるこのを人間の性として受け入れ、その上で一人とは違うコミュニティを作る方が人を救うのかもしれない。

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matsud0
1988年11月生まれ。保険会社システムエンジニア→収益不動産会社の営業。奥渋谷、六本木をメインに活動中。収益不動産情報をメルマガで配信中しています。